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前の10件 | -

 [ショートショート]

胆は垂直に下ろせ
海の底に碇を沈めるように
潮流に心が流されないように

胆から心臓までを繋ぐ神経は
荒波の中で揺らぐけれど
大きく流されなければ
揺れを楽しむことさえできるかも知れない

脳天からはまっすぐ天までアンテナを伸ばせ
天と地に引っ張られて
身体は固定される

背筋が伸びたら
ファッションショーのモデルのように歩け
今、目の前の道が花道になるように

胆から脳天までの線をイメージしろ
その軸を中心に世界は回っているのだ
それは誰にも証明できない
自分で証明するしかない

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不幸 [ショートショート]

たった今決心したのですが
不幸はここで押しとどめます

不幸がここからどこかに行こうとしたら
精一杯引き留めます

どこかに行かないように24時間見張ります

それでもうとうとしている間に
不幸はどこかに行こうとしてしまいます
そうしたら、また不幸を探して連れ戻します

これが今世紀最後、宇宙最後の不幸になりますように
そう願うと不幸であることに喜びを見出せます


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過ち [ショートショート]

たったいっかい曲がり角を間違えただけなのに
戻れなくなった

そこからいくつもの曲がり角を曲がってしまったから
さらに戻れなくなった

何を基準にして歩いていたのかわからない
手がかりを探して戻ってみたけれど
たくさん道がありすぎるのに
もう道しるべはない

色だったか?
建物の形?
あるいは東西南北のどこから何百メートルという数字?
何が先にあった?
その次には何が来た?

しょうがないよ
戻る術はないのだし
それよりはもう、違う方向に歩き出した方がいい

たくさんのまちがいを抱えて
痛くなった心をさすって
上塗りされた汚い道の中に足の置き場を探り
あまり足が沈み込まない程度に
あまり靴が汚れすぎない程度に
あるいは汚れても落とせる程度に
靴を汚しながら
今晩眠る瞬間だけを夢見て
とにかく息するんだね

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6月 [ショートショート]

もう6月だよ
そのまえはもう5月だったのに
つぎには7月が来る
8月に向かって

暑さから
寒さへ
寒さから暑さへ
ちょうどいい温度はどこにあったのかな?

凍りすぎなかったし
溶けすぎなかった

ただ単に今を認識しながら
手探りでつかめる物に身体をあずけながら

もう6月だよ
そのまえはもう5月だったのに
つぎには7月が来る
8月に向かって

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くうはく [ショートショート]

ひまをもてあまして
文字を並べています
ひまが広がると
心の荒野が広がります

その広がりは
「つまらない」という場所になってしまいます

それを広げないために文字を埋めています
文字、文字、文字、文字
ひとつひとつの形があり
それを並べると意味がうまれます

どの形が好きか?
好きな形だけ選んでいたら意味にならないけど
その中に意味を見つける人もいるのかもしれません

まあいいか、
とりあえず知っていることだけ
書けるところだけ
描けるところだけ
埋めておきます

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ラーメン [ショートショート]

ラーメンのスープの中に
マスターの汗がひとつぶ落ちるのを
見た

もし鼻が落ちて沈んでんいるのなら
箸でつまんで外に出すのだけれど
汗だとそうはいかない

隣に座っていた人が
「ラーメンの達人」と自分で名乗り
「あなた見ましたね」
と意味ありげな笑みを送ってきた

「味が増しましたよ」
と笑うその人に答えたくないから
黙ってラーメンを食べ出した

いったい何の味がどう増したというのか
腹立たしい思いが頭をくもらせた

カウンター席というつながったテーブルで
同じ時間に同じものを食べると
変な親近感が生まれてしまう

それを裁ち切り席を立つ瞬間に
自分の望んでいたものがわかった
ラーメンと自分をつなぐすごく個人的な事情だ

今食べた麺一本を取っても
隣に座った達人のどんぶりの中の物とは違うのだ
自分のどんぶりには
自分だけに用意されたラーメンが入っていたのだ

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クッキー [ショートショート]

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋の
白い印刷の文字
それはバニラ味の包み
茶色い文字はショコラ
ピンクの文字はストロベリー

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋は
ただの袋だから
クッキーを食べてしまっても
文字は消えない

クッキーのひとつひとつを味わって
今、中身のなくなった袋を見ている
透明の袋の中に入っていたもの
それがなくなると袋の向こうが見えるね

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋が
大きいひとつの袋にまとまっていて
それはスーパーの決まった場所にある

そのクッキーを買うためにその場所に行ける
スーパーの迷路をなんとなく覚えている
好きなもの
食べたいもの
必要なもの
ただ通って確かめたいもの

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋は
その棚の上にいったいいくつあるのか
ほかのクッキーも包んでいるから
それは膨大な数だ

その膨大な数の中から
今手の中にあるひとつの袋
目をつぶって手探りで引っ張ってきた

たまたま今日食べることになったクッキー
さあ袋を空けます
香りで何味かわかりますかな?

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋から
こぼれ出たひとつ
口の中でほろほろと溶ける
そこにつながっていた膨大な時間を味わう

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幻の画家 [ショートショート]

ザラク・ド・シシェリという画家が
ものすごい絵を描いたということなんだけど
その名前を誰も知らないのだ

というのは、その名前はふと頭によぎったもので
「絵を描いたんです」
という暗号が送られて来て
絵の情報がなぜか頭の中に残っているのだ
でも、それは自分の頭の中だけのことなので
どうもほかの人には送られてきていない

ザラク・ド・シシェリは土の中に埋まり
その絵も土の中に埋まり
それはどこかにあるのだけれど
どこかはわからない

見つけることができたとしても
土と一体化していることだろう

ザラク・ド・シシェリという名前だけが心に刻まれ
誰に話してもわからないから
ただ自分の心の中にだけある

幻の画家
どういう風にすごかったのかは
結局わからないのだ

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 [ショートショート]

ああよかった
力が尽きてきた
もう少しで もう歩けなくなる
そうなれば そこにいるしかなく
そうすれば もうどうしようもない

動けてしまうから どうにかしようとする
どうしようもなくなれば
そこで果てるしかない

そこは希望の場所に思える
そこは安住というその言葉そのものに思える
いろいろに名付けられたその場所を夢見てあと少し歩く

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呪文 [ショートショート]

なんじゃらもんじゃら
しゃくしゃくじゃくじゃく
決して目を開けてはいけません

まぶたの裏に世界が見えましたかな?
そこに金の祠が見えましたかな?
その中に祀られたおきつねさまが
真白い顔をこちらに向けられましたかな?
こーんと鳴きましたかな?

ではでは
なんじゃらもんじゃら
しゃくしゃくじゃくじゃく
そっと目を開けてごらんなされ

まやかしにごまかされようとしましたら
しっかりと手を握り
固く心を閉じなされ
そして呪文をとなえ続けますんじゃ

なんじゃらもんじゃら
しゃくしゃくじゃくじゃく
決して目を開けてはいけません

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