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裸の社長 [ショートショート]

4月下旬。
いろはせんべい本店。
社長の色葉は今日も朝から元気だった。
「社長、もう他の社員が出社しますから、Yシャツを着ておいて下さい」
 勤続30年の山村かすみ専務が社長に言った。
 かすみ専務は社長のいとこに当たる。
「はいはい。でも。もうこの季節になると暑くてたまんないんですよ」
「でも、裸はやめて下さい。Tシャツでもいいですから、とにかく上にシャツを着るようにして下さい」
「はいはい」

 6月ともなると、色葉社長は自宅からエアコンをガンガンきかせた自家用車でやってくる。その時はシャツは着ている。だけど、社内に入ると暑くてたまらなくなり、かならず一度は上半身裸になってしまう。
 冬でも社長が暑いと感じればいつでもそうする。
 家ではパンツ1丁。風呂上りにはフルちんのこともある。だから、まあ少しでも何か着ていればいい方なのだけれど…。
 親族会社とはいえ、地元の人たちがパートで働きに来ていたりするから、そうそう失礼な格好をしているわけにもいかない。

 実は、いろはせんべいで働く人たちは、社長の裸にはもう慣れている。
 いやだなと思った時もあったけれど、見なければいいのだ。
 社長は裸になってしまうことを除けば、特に害のある人ではない。
 それでも、自分の生活に嫌気がさしているような時は、社長を見ると、なんだか切なくなる。
 だけど、そういう時だからなのか? 会社に出ることで気分転換して、社長の裸を見て、妙に元気になる人もいる。

 裸の社長は今日も元気だ。
 悪気はないのだ。
 法律に触れない程度だし、会社の中なんだから、まあ、しょうがないかな、と社員は思っている。
 それよりも日本一のおかきを目指して努力する方がずっといい。
 社員はそれぞれの思いを心に秘めて、今日も誠心誠意仕事に没頭する。
s_human.png

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色鉛筆 [ショートショート]

短くなった鉛筆から使おう
その鉛筆がなくなったら新しい鉛筆を買える
だけどときどきは長い鉛筆を使おう
鉛筆の長さをそろえたい時に

今見えている色に合わせて
心を空にして絵を描いていると
いつの間にか色鉛筆の長さはふぞろいになっている

どんなに修正しようとしても
全部を同じ長さにするのは難しい

もう長さのことは考えないようにしよう
色のつながりに沿って並べよう
だけどそう思っていても
いつの間にか鉛筆の居場所が変わっている

ばくぜ~~んと、
並んだ順で違和感がなければそれでいい
だって鉛筆自体の違いを気にしていたら
ずっと考え続け、並べ続けなければならなくて
そんなことに手間取っていると
絵を描く時間がなくなってしまう

色鉛筆(R).png
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のろし [ショートショート]

もくもくと立ち上っている 煙が見えるでしょうか?
あれは狼煙と申しまして
何かを伝える手段であります

その狼煙によりますと
どうやら あの山の向こうのとりでに
百人もの盗賊が押しよせたようです
煙に そう出ています

あ!
狼煙を上げている人も
今! 見つかってしまいましたよ!

ぽ ぽ ぽ と最後の煙が
ため息のように空に上がっております

せっかく伝えるという手段を知っていたのに
なんとも悲しいことです

でも私は見ました!
たしかに煙は上りました!!

ぽ ぽ ぽ と最後に上った煙は
心にしっかりと焼き付きました

もう間に合わないでしょうし
だいいち 盗賊が怖いから近づけませんが
私が記録しておきましょう

のろし.png
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オーロラ [ショートショート]

おーろらを見ることができたら
その下にもぐりこんで
目をいっぱいに見開いて
消えるまで せいいっぱい 見続けよう

そのあたりは マイナス40℃だということだけれど
心が熱ければ 凍りはしない

おーろらには触れないから
見るしかないのだ
いつまでも いつまでも 心に描き続けられるように
フル稼働で見るんだ

息を止めて

空気を動かさないように

じっと じっと見続けるんだ

オーロラ02-art.png
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浮かぶ [ショートショート]

水面に 仰向けに 少しの間 寝転がり
浮かぶでもなく 沈むでもなく
身体半分は 水に溶け込み
顔だけが空を向いている

そうやって月日が経ち
ふと気づくと 身体は水と一体化していた

どこからどこまでが手だっただろうか
考えてもわからないし
動かす方法もわからないから
そのままにしよう

どちらかに進みたかったわけでもなく
ただそこにいれば良かったのだから

自分をとりまく景色から
身体だけは、どうにか独立しているようだから
それ以上望まないことにした

浮かぶ-artex.png
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お店 [ショートショート]

きのう行った店のことですが
あの店は 飴細工だったのです

だってね
入り口に入ったら
ベタベタしていて
お店の人はちっとも動かない
なんと その人たちも飴細工だったのです

ちょっとぺろっと舌を出したら
甘いにおいがしました
おっと、とつまずきまして
舌が柱にぺたっとくっつきましたら
甘かった!
飴でした!!

それが!!
外があまりに暑かったので
お店ごと溶けたのですよ
もちろんお店の人も溶けました

ですから、残念ですが
その店は二度と見つからないはずです

あなた 飴細工のできる方をご存知ですか??
お店のカタマリは残っていますから
そこから もういちどお店を造ることができたら
どんなにか いいでしょうに

ご存知でしたら 教えてください

お店art-ex.png
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記事 [ショートショート]

もしも~~し
こちら編集局です
記事はすでに削除しました

どの記事か?
は?
わかりません。

とにかく
問題の多かった記事です

お察し下さい
削除した以上、その詳細をお知らせするわけにはいきません

忍耐がおありなら
どうぞ 改めてご投稿願います
もういちど同じものが書ければ
掲載については再考させていただきます

問題?
それは問題が多かった部分なのですが
その問題を全部解決できれば もちろん掲載いたします

記事-artwhex.png

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ロックスター [ショートショート]

ロックスターが絞り出す声
高音が心臓に響く
ロックスターバンドが奏でる
ぶんぶんにのりのりの曲
心の芯までとろけさせながら
踊りまくった夜

ロックスターは限界までシャウトし
客席にダイブしてぶっ倒れ
保護された

まるで長距離を走ったランナーみたいに
バスタオルにくるまれて
黒いリムジンで会場から連れ出された

会場はがらんどう
汗のみずたまりと人々が捨てていったもので埋まっていた

奇抜だと思われていた
ささくれ立った黄色い髪
穴の空いた革ジャン、真っ黒に塗ったツメ
ロックスターのようになりたくて皆そんな恰好をしていた
そこでは、たぶんドブネズミスーツ姿の方が奇抜だっただろう

ロックスターはもう夢見ない
療養施設の壁を見ながら
今日の病院食を静かに待っている

ロックスター-ex.png
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へそ [ショートショート]

げーじつと げんじつのはざまに ヘソがあった
へそはでっぱっていた

押してごらん
妙な音がするよ
げー! じつっ!

気まぐれな音だよ

引っぱってごらん
まあ、出っぱりがまんまるだから
うまく引っぱるのは無理だろうが
どうにか なんとかして 引っぱってやろうと
みながみなねらっているから
いつかは だれかが引っぱるかもしらん

引っ張ったらそのヘソ すぽんと取れたりしてね
あ!
それで ヘソか
へ~~~
そ~~~か~~~

へそ-artgrex.png
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じくじく [ショートショート]

かたちから ことばまでの道のりを じくじく行く
とがった 先っぽに つっつかれないように そっと止まる
そこから 見なれたかたちを見つけて また じくじく行く

ことばと思っていたものは
ただの青のりだったよ
あはは
しょうがない

またつぎのかたちを 見つければ
そこまでの道は なんとか見つかるかな
そこには ことばがあるかな?
けっきょく
じくじく行くしかない。

s_jikujiku-cl.png
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